slumber

「大将が寝坊なんて珍しいですねー」
 ジェーンは思わず呟きながら、部屋の扉を開けた。
 ドミニカはジェーンの気配を感じ、うーん、と寝返りを打った。
「大将、起きて下さいよ。もう起床の時間ですってば」
 毛布の隙間からだらりと伸びたドミニカの腕を掴んだジェーンは、はっとした。体温が高い。これはまさか……風邪?
「大将、何処か具合悪いんですか? 風邪ひいたとか」
「分からん。ただ、だるい」
「え! だるいとか完全アウトじゃないですか! 医務室行きましょう、連れて行きますから」
 ぐい、と身体を引っ張りかけたジェーンは、強烈な力でベッドに引き込まれた。
「た、大将?」
「こうすれば治る気がする」
 ドミニカはそのままジェーンを毛布の中に引き込むと、寝惚け眼のまま……、唇を重ねた。

 暫く二人一緒に微睡む。時計の針が大分進んだ頃、ジェーンはドミニカをちらりと見、問い掛けた。
「……で、具合は良くなりましたか?」
「どうだろうなー」
 気怠いままの声に、ジェーンが問い掛ける。
「医務室行かなくて良いんですか? てか私達二人でまったりしてて良いんですかね」
「大丈夫だろう。504(ここ)で起床時間ぴったりに起きてくる奴なんてそうは居ない」
「それとこれは話が違う気が……ちょっと、大将?」
 ドミニカはジェーンを抱きしめると、胸に顔を埋め、何度か息をして、瞼を閉じた。
「眠たくなった」
「寝るなら医務室で寝た方が」
「こうしていた方が、落ち着くんだ。お前だからだな」
 ストレートな物言い。ジェーンは顔を真っ赤にしながら、ああ、風邪ひいてもこの人はこの人なんだと内心独りごちた。

「すまない、ここにジェーンが来なかったか?」
 ノック無しに、アンジーが入って来た。そうして、同衾している二人を速攻で見つけた。
「ああ、居た居た」
「ちょっ! アンジーさんそのリアクションおかしくないですか?」
「いつもの事じゃない」
「それよりアンジーさん、ウチの大将が風邪ひいたみたいで……」
「それで二人してベッドに居ると?」
「いや、それは……」
 そのタイミングで、ドミニカが顔を上げてアンジーに告げた。
「その通りだ。こうしていればそのうち良くなる」
 真顔のドミニカを見、苦笑いしたアンジーはお大事にとだけ呟いてそっと部屋の扉を閉めた。
「あー。何か勘違いされてる」
 嘆くジェーンにお構いなしで、ぎゅっと抱きつくドミニカ。ジェーンは溜め息を付くと、ドミニカをそっと抱きしめた。
「仕方有りませんね大将は……そう言えば竹井さんが言ってましたよ。扶桑では風邪ひいたら他人にうつすと治りが早いとか何とか」
「それをジェーンは早速実践してるのか?」
「こんなにベタベタされたら、そりゃ私もそのうち風邪ひくでしょうね」
「大丈夫だ、問題無い」
「何がです」
「その時は私がお前を抱きしめてやるからな」
 ジェーンはドミニカの身を預かりながら……苦笑いするしかなかった。

end


フォロワーさんからのリクエスト。久々のドミジェン。
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