sisterhood II

「何をしているハルトマン! 新年だからと言って我々のやる事に変わりはないぞ!」
 腰に手を当て言い放つ堅物大尉。ミーティングルームでくつろぐエーリカはソファに埋もれそうな位だらっと身体を預け、眠たそう。
「またまたトゥルーデ、カタいんだから〜」
 エーリカはふわあ、とあくびをしながら答えた。哨戒任務明けで、身体がだるそうだった。
「だからー」
「ダカラー」
 横でコーヒーを飲みながらお喋りしていたシャーリーとルッキーニも、同じ口調でからかった。
「お前ら……揃いも揃って」
 怒りに震えるトゥルーデを前に、コーヒーの入ったマグカップに一口口を付けると、シャーリーはルッキーニの頭を撫でながら言った。
「まあ、せっかくの年明けなんだし、アンタも何か少しは祝ってみたらどうだい」
 呆れるトゥルーデ。
「これだからお気楽リベリアンは……それどころじゃないだろう」
 悪戯っぽく、顎で指し示しながら反論するシャーリー。
「そう言うアンタの左指にはめてるそれはなんだって話だよ」
「ぐっ……こ、これは」
 言われて片方の手で指輪を隠す。二人の絆の証を指摘され、咄嗟に反論出来ない。
「良いんです、トゥルーデはこれで」
 珍しく真顔のエーリカは、トゥルーデの腕をぐいと引っ張ると、無理矢理座らせて肩を抱いた。そうして真顔で言葉を続ける。
「私達、夫婦ですから」
 今度はお気楽大尉が呆れ顔。
「夫婦って言われてもなあ……ハルトマン、お前の性格ホント羨ましいよ」
 言われてエーリカは不敵な笑みを浮かべる。
「イイナー、ふうふ」
 ルッキーニは指をくわえて羨ましそうに呟いた。
「良いなって。まあ、ルッキーニにはまだ少し早いかもな」
 あやす様に諭すシャーリー。その言葉を聞いて、少し拗ねるルッキーニ。
「えー、だってー」
「そうだなー。ルッキーニがどうしてもって言うなら、今度街に出て見てみるか?」
「ヤッター! じゃああたしネックレスが欲しい」
「ネックレス? 指輪じゃないのかよ」
「あれ?」
 どこかちぐはぐな仲良し二人を見て、トゥルーデに身体を預けたまま腕を絡めたまま、くすっと笑うエーリカ。
「どうかしたか」
 トゥルーデは真面目な顔でエーリカに問う。
「何か、ちょっと昔のトゥルーデと私を思い出したかな」
「私はあんなだったのか」
「幼いとかそう言う意味じゃなくてさ。鈍いって言うか」
「本人の前でそう言う事言うか」
「だってほら。トゥルーデ、自分で言った事、もう忘れてるし」
「言ったって、何を?」
「『新年だからと言って我々のやる事に変わりはない』ぞ〜って。つまりはね」
 エーリカは耳元でこそっと囁いた。途端に顔を真っ赤にするトゥルーデ。
「ちっ違っ! 私はそう言う意味で言ったんじゃない! 大体エーリカお前はいつもいつも……」
 つい我を忘れて相棒を名前で呼んでしまうトゥルーデ。そこにも気付いて、言葉が止まる。
「さ、じゃあ変わらない事、証明して貰おうかな。早速行くよ〜」
「ちょ、ちょっと待ってくれないか……」
「だーめ。楽しみだなー」
 エーリカはトゥルーデの唇を人差し指で塞ぐと、自分の唇にも当てて、内緒のポーズを取った。余計に困惑するトゥルーデ。そんな彼女の腕を引き付けてぐいぐいと引っ張ると、じゃあね、と残った二人に手を振って、一緒にミーティングルームから出て行った。
「ンニャ? ハルトマン達何処行くの?」
「まあ……部屋だろうな」
「何で?」
「それはルッキーニがもう少し大きくなったら教えてやるよ」
「ふぅん。二人で一緒にトレーニングするとか?」
「それはある意味当たってるかもな」
 シャーリーはそれ以上言及せず、コーヒーをぐいと飲み干した。意味が分からず、首を傾げるルッキーニ。
「ま、今日も平和ってヤツだよ。お菓子食うか?」
「食べる食べる」
 シャーリーの言う通り、基地は今日も平和らしかった。

end


同日スト魔女百合スレ避難所に投下した同タイトル「sisterhood II」。
エーゲル+シャッキーニ。

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